羊の書斎 ~ 晴耕雨読 ~

本を読んだり、畑を耕したり、キャンプにいったりなブログです

【読書レビュー】父が娘に語る~美しく壮大でとんでもなくわかりやすい~経済の話 ☆5.0

こんばんは、今日は暑かったですね~💦

 

今回も再読の本をご紹介させていただきます。

 

ブログで紹介しようと思って行う読書は、付箋はったり、戻って読み直したりして時間がかかる分、理解が深まるということをまじまじと感じました。

 

今回の本も面白おすすめ本です!

 

どんな本?

 

著者のヤニス・バルファキスさんが自分の娘に伝えておきたい、この世界の経済の本質について語る本です。ヤニスさんは、2015年まだ記憶に新しいギリシャの経済危機の時に財務大臣を勤めていた方です。学者、政治家らしからぬ風貌(革ジャンスキンヘッドでバイク)で「経済界のブルース・ウィリス」といわれてたとか。

 

専門用語や数式は抜きにして、経済の本質と起源をとても分かりやすくこの本に書かれています。

 

故郷のエギナ島で奥さんとゆっくり過ごしながら9日かけて書ききった本ということです。SF映画や本の例を取り上げたりされており、飽きることなく読みきれました。

 

 

内容~経済はヨーロッパから始まった~

 

まずはじめに、地政学的な観点から、ヨーロッパ圏が世界に台頭するに至った経緯を説明しています。

 

人類が経済を始めたきっかけは、狩猟採集から農耕へのシフトに伴う「余剰」の発生です。この「余剰」を管理する為、守るため、奪うために、文字、債務、通貨、国家、軍隊、宗教、そして貧富の格差が生まれました

 

ではなぜ農耕へのシフトがヨーロッパ圏で起きたのか?

 

それは、他の自然豊かな地域では備蓄、余剰確保の必要がなかったからです。わざわざ苦労して、複雑で危険な農耕を選択しなくとも、狩猟採集生活で食べて生活することに苦労しなかったのです。一方、イギリスでは気候に恵まれない為、農耕で余剰を作らないと生き延びることが出来なかったのです。

 

そしてヨーロッパ圏で余剰から格差が生じ、支配する側とされる側ができました。産業革命により機械化、効率化が進みますが、これは人々の暮らしを良くしたり、仕事を楽にさせるための仕組みではありませんでした。より大きな余剰を効率よく生み出し、持てる者がさらに富を得るためのシステムだったのです。

 

蒸気機関が出回り始めた頃、リストラされた労働者達は機械を破壊しました。生産量を増やすために、工場を大きくして人を沢山雇うのではなく、機械が導入されたからです。理由は労働者より機械の方が安かったから。その差額は経営者の懐に入ります。そして投資により更なる富を経営者にもたらします

 

しかし、機械が産み出した製品を消費するのは人間です。リストラされた労働者はお金を持っていないので製品を買えません。そんな浅はかな選択をして富を独占する判断を下す経営者に対する抗議として、労働者達は機械を壊したのでした。

 

その後、貧富の差は国内にとどまりませんでした。膨大な余剰から作り出された巨大な船、鉄製の武器、銃、兵力は持たざる国を簡単に支配、抹殺せしめました。滅ぼされた人々は余剰を持つことがなかったため、船も銃も持たず、自然と調和して、豊かな知性、文化を発達させていたのです。

 

この辺りは本書で紹介されている「銃・病原菌・鉄」で詳しく説明されています。とても刺激的な内容でおすすめです。

 

 

 

経済の本質とは

 

それは信頼である。

 

銀行はお金を貸し、人々は借りたお金で商売でもうけを出してお金に利子を付けて銀行に返します。銀行は貸したお金を回収しきるまでの間、倒産のリスクを肩代わりするのです。

 

では、もしお金が返ってこなかったら銀行は倒産するか?

 

答えはNo。銀行は倒産のリスクを、株や証券という形でほかの投資家に売るのです。例えば1000人の投資家に権利を分配して売れば、商売がこけても、銀行はつぶれず、投資家が1/1000の負債を抱えるだけ、損をして終わるだけです。

 

ではそもそも銀行は貸すお金をどこから持ってくるのか?周りから回収した利子をため込んで、儲けをだして、貸す金を持ってくるのか?

 

答えはNo。商売を始める人の口座の残高に必要なだけ"0"を書き足すだけ。魔法のようにお金を増やせます。もちろん、商売を始める人が、利子を含めてお金を将来きちんと返してくれることが前提の話です。

 

この本を読んでらんぷが一番ショックを受けたポイントでした。リスクを負うことなく、ありもしないお金を貸せるシステム、、

 

らんぷが信仰する物理学の保存則が成り立っていないのです。これはまるで自転車操業です。

 

ほかにも、大戦中の収容所のなかで、配給品から物々交換がおこなわれ、保存のきくタバコが代用貨幣として取引された例が挙げられていました。紅茶の好きなイギリス捕虜、コーヒーの好きなフランス捕虜、タバコを介した為替が発生し、ずる賢い者はしっかりと儲けを出したようです。

 

このまま世界はどうなるか?

 

今の経済システムは余剰のやり取りの中でいかに余剰を吸い上げ、増やし、保持するかに発達してきました。債務というありもしないお金を作り出す魔法まで。。

 

宗教、国家、法律で、一部の人間が富を独占するようなシステムがこの数百年で作られました。もし、10人が贅沢するために10000人の労働と搾取が必要ならば、10000人で10人を襲って、富を分配すれば貧富の格差はなくなります。そうならないのが今の世界で、警察や国家、宗教を含めた思想やシステムを作り上げたのが10人の人間なのです。

 

このまま、富を生むために山は削られ、木は切られ、海と空気は汚され、動植物は絶滅し続け、地球温暖化は進み、貧困が広がり、戦争は続きます。

 

この利益追求という考えは、実はつい最近できたばかりの概念なのです。昔、古代ギリシャでは、公益を考えられず、自分のことばかり考える人のことを「イディオテス」と言いました。18世紀のイギリス人学者はこれを「愚か者」と翻訳しました。

 

今の利益追求型の市場社会は、人間を「愚か者」という、地球にとってのがん細胞にしてしまうのです。

 

この本をよんでみて

 

実は、先の収容所でのタバコの話には続きがあります。ヤニスさんの父親は同じように捕虜として配給品で暮らしたことがあったので、その時はどんな様子か聞いてみた様です。

 

父親の答えはこうでした。

「もらった配給品は皆で仲良く分け合った。」

 

儲けようとか出し抜こうというきりのない欲求が産み出した市場社会という巨大なシステム。その先にあるのは破滅と、再生を繰り返しながら格差が広がって行く地獄なのかもしれません。

 

そんななかでも、配給品を仲良く分け合う心と余裕を持って、幸せに生きて行けたらいいなーと思いました。

 

らんぷも、子供が大きくなったら、この本を読ませたいと思います!