羊の書斎

お気に入りの本のレビューをメインにやっております。ごゆっくりどうぞ~

【読書レビュー】アルジャーノンに花束を ☆4.5

今日ご紹介する本は、十数年ぶりに再読したダニエル・キイスさん(翻訳:小尾芙佐さん)の”アルジャーノンに花束を”です!


1999年に早川書房の文庫本で初版となっていますが、初めて読んだのは中学生くらいの時ですかね~。その後、何度か読みましたが、読むたびに印象の変わる本です。

 

本の内容


主人公のチャーリー・ゴードンは32歳で幼稚園児並みの知能しかありません。ある日、大学の臨床試験の対象に選ばれて、知能が向上する手術を受けます。

ちなみにタイトルの”アルジャーノン”と言うのは、チャーリーの前に動物実験で手術をしたネズミの名前で、一緒にテストを受けていた賢いネズミの名前です。

手術後、チャーリーの知能は急速に向上してゆきますが、人との付き合い方や過去の自分との向かい方といった心の発達が追い付かずに苦労を抱えます。普通の人が一生をかけて育ててゆく知能と心を、数か月で、誰も達したことのない高みまで上り詰めるチャーリー。心と頭と体がちぐはぐのまま、人とぶつかり、孤独を抱えてゆきます。

そんな中、アルジャーノンに変化が。段々と奇行が増え、知能は手術前より低下し、ついには死んでしまいました。。

、、と、言った感じで物語はラストに進んでゆきます。

 

感想


本の書き出しは、

”けえかほうこく1 3がつ4日 ストラウスはかせわぼくが考えたことや思い出したことやこれからぼくのまわりでおこたことはぜんぶかいておきなさいといった。、、、”

という感じです。全体がチャーリーの日記という形を通して、チャーリーの内面がダイレクトに伝わってくる不思議な物語です。

初めて読んだときは、チャーリーの数奇な人生に感動しました。知遅れの子供にむごい仕打ちをする母親や、チャーリーの職場の同僚に腹を立てたり、IQだけではなくEQも大切なのだな、と思っていました。

しかし、大人になってから再読すると、周りの人たちの苦悩、例えば、世間体ばかり気にする母親と、それを懸命になだめる父親のいる家庭の在り方や、知遅れのチャーリーを、親友の頼みで雇っていたパン屋さんの店主の思い、チャーリーの一部始終を見てきたアリス先生の思いなど、色々な立場の人の置かれた状況に強く心を惹かれました。読み終わってからは、登場人物達のその後の幸せを願ってやみません(泣

そんなチャーリーが1年弱で駆け抜けた人生の栄枯盛衰を追った本作、とても内容の濃い小説です。読み手の年齢に会わせて心に響く名作だと思いました!

 

後半、ラストに向けては涙で字が読めない可能があるので、ハンカチとティッシュの用意を忘れずにw